株分けと実生で増やす

こもまき

株分けで増やす

増やし方が簡単で、すぐ観賞に役立つのが株分けの特徴であり利点だ。根から芽のでる種類や、根茎が大きく広がる種類なら大抵できる。適期は二月~六月がほとんどだ。

実生で増やす

種まきのこと。もっとも自然で、しかも大量生産できることが何よりの利点。

種子は水分を吸って呼吸作用を活性化し、一般的な植物だったら、十八度ぐらいで発芽するので、この条件を満たしてやる必要がある。

時期は五月上旬~七月中旬がほとんど適期だろう。小さい種子ほど発芽率の良い傾向がある。

大きい種子は一日水につけて、浮いているものは発芽しないのではぶいておく。

接ぎ木で増やす

マキ

技術的にはかなり難しいものもあるが、利点も多い。同一種か近縁種を結合させ、より目的に合った苗を作ったり、実物や花ものは早く開花、結実させることができる。

また、接ぎ木の特性を活かせば、例えば、一本の木からキンカン、ユズ、ナツミカンの実をならせることが可能。

接ぎ木には、切り接ぎ、割り接ぎ、呼び接ぎ、腹接ぎ、十字芽接ぎ、箱接ぎ、片箱接ぎなどある。

接ぎ木の時期

針葉樹・・・二月下旬~三月上旬までが適期。

常緑樹・・・二月下旬~六月中旬までが適期。

落葉樹・・・二月下旬~四月上旬だが、種類によって六月上旬までできるものもある。

針葉樹の接ぎ木の方法

針葉樹の接ぎ木は、二月下旬~三月上旬の適期以外には活着しない。時期を逃したときは来春まで待つしかないので、計画的に行う必要がある。

クロマツの例・・・割り接ぎ、腹接ぎ、呼び接ぎができる。接ぎ木した後は台木の枝を少し切除し、接ぎ穂のほうへ養分や水分がいくようにしよう。

落葉樹の接ぎ木の方法

二月下旬~四月上旬が適期。台木は一年~三年生までの若木で、接ぎ穂と親和性の高いものを選ぶ。

接ぎ木をしたら、接ぎ穂の活着を促進させるため、台木は剪定して枝や葉を落としてやる。ウメの例・・・切り接ぎ、呼び接ぎ、腹接ぎができる。

挿し木で増やす

雄松

枝、茎、新芽など、親木の一部を切り取って発根させるので、親木と同じ性質を受け継ぐことができる。また、種子まきで増やすより成長が早いので、それだけ短期間で成木になるのも利点の一つ。他の増やし方に比較して、初心者でも失敗が少ないという利点がある。しかし、全ての植物が挿し木できるわけではなく、ヤシ科などのように、挿し木のできない種類もあるから注意が必要だ。

挿し木の時期

植物によって発根しやすい時期が違うのでもっとも適した時期に行う必要がある。針葉樹・・・高温を嫌うので三月下旬の春先か、六月下旬~七月上旬の梅雨時期が適期。ただし、イブキ類だけは二月下旬のまだ寒い時期に発根剤を使用して行う。常緑広葉樹・・・四月の春ざし、六月下旬~七月上旬の梅雨挿し、九月頃の秋挿しができる。最適期は春~梅雨期で、秋挿しは発根率がやや低下する。落葉樹・・・三~四月上旬の若葉が出る前が適期。穂木は、前年に成育した中から充実したものを選ぶ。六月下旬~七月上旬の梅雨挿しもできるが、この時も枝をよく選び、春に出た若葉が成育し、枝としてすでに安定しているものを選ぶことが大切だ。

針葉樹の挿し木の方法

親木から穂木を採る→穂木から挿し穂をとる→用土を準備する→発根剤を付けて挿す→挿し床の管理→定植。

このような順序で針葉樹の挿し木は行うと良い。挿し木の時期は三月上旬~五月上旬まで。前年伸びた病害虫のない充実した枝を選び、穂木を採る。

スギ類を例にとると、挿し床用土は、底に赤玉土中粒をゴロ土として入れ、ミジン粉四、赤玉土小粒六の割合の混合土を使う。

定植は一般的に秋だが、スギ類は発根が遅いので、あまり成育のよくないときは、翌年にする。挿し床から苗木を出すときは、根を傷めないようにヘラですくい出す。

常緑樹の挿し木の方法

常緑樹の挿し木は、春先の四月上旬~初夏の七月中旬までが一般的。だが、種類によっては四月上旬~五月中旬にしかできないものもあるので注意する。

また、穂木をとるときは日中を避け、朝の七~十時か、夕方の五~六時にすると良い。

落葉樹の挿し木の方法

挿し木の時期は、二月下旬~七月上旬までだが、初春のまだ芽が出ていない時期か、初夏に入ってから、出た芽が充実した時期かにする。

前年に伸びた良い枝を穂木にとり、採ったらすぐ水につけておく。

取り木で増やす

イブキ

親木の一部を傷つけたり、皮をはいだりしてその部分から発根させて増やす方法。挿し木や接ぎ木の難しい木でも、取り木ならできる木がある。

一本の親木から大量に増やせはしないが、正しく行えば初心者でも失敗の少ない方法だ。

取り木の時期

針葉樹・・・三月上旬~六月上旬が適期。

常緑樹・・・三月上旬~七月上旬と、九月上旬~十月上旬の二回だが、秋どりは発根率が低下するので、発根まで注意する必要がある。

落葉樹・・・四月上旬~七月上旬が適期。

針葉樹の取り木の方法

スギ類は三月下旬~六月上旬で、マツ類は五月下旬~六月上旬が適期。

スギ類の例・・・環状削りか半月削りにし、発根が順調なら九月上旬~十月上旬に切るが、発根の悪い時は翌年の春に延期する。

常緑樹の取り木の方法

一般的な適期は四月上旬~六月下旬。葉に特徴のあるものが多いので、良いところを生かすように採るように心がける。

ツバキ類の例・・・取り木用土はミズゴケ単用で、取り木中は、乾かさないように水を追加してやる。

肥料の知識

肥料

植物が生育するためには、さまざまな成分が必要だ。自然に吸収される成分も多くあるが、特に大切なのが、三要素といわれる「窒素」「リン酸」「カリウム」だ。

自然肥料と化学肥料

油かすや鶏糞などのように、自然界にある動植物を原料とするものを、「有機肥料」といい、硫安や尿素などのように、化学的に生産されるものを、「無機質肥料」という。

「有機肥料」は、成分量はあまり多くないが、多種類の成分を含み、少しずつ長期的に効く性質があり、多少多めに与えても害にはならない。

「無機質肥料」は、成分の含有量が多く、即効性もあるが、それだけに与え方を注意しないと強すぎる場合がある。

肥料の成分と使い方

肥料によって、植物のどの部分に効果があるかは違ってくる。それだけにうまく使い分けないと、花着きをよくするつもりが、枝葉ばかりを茂らせることになりかねない。

枝葉に効果のある肥料

窒素肥料で、油かす、魚粕、堆肥、硫安、石灰窒素などがこれに当てはまる。

花や実に効果のある肥料

リン酸質肥料で、過リン酸石灰、鶏糞、骨粉、米ぬかなど。

根に効果のある肥料

カリ質肥料で、草木灰、硫酸カリ、塩化カリなど。

植え付けと根回し

新緑

移植は、現在成育している樹木を、他へ植え替えて成育させるので、適切な方法で行わないと枯らしてしまう原因になる。

その樹木の特性や性質に合った時期を選んで植えつければ活着しやすく、また、その後の成育も順調にいきやすい。

やむを得ず不適切に移植したものは、どうしても無理があるので、事前の根回しなどをうまくやっておかないと、活着しにくくなる。

植物は、根から水分や養分を補給しているが、移植はどうしてもその根を損傷することになるので、回復しやすい時期を選び、地上部を切り詰めるなどの作業が不可欠だ。

針葉樹の移植の適期

一般に寒暖に強い樹木が多いので、比較的移植しやすいといえる。地方差があるが、標準的には三~四月と九~十一月が適期で、虫害を避けるマツは十二月~二月だ。

常緑広葉樹の適期

本来は温帯に多い樹木なので寒さに弱い。六月上旬から七月中旬ぐらいまでが適期。目安としては新梢の充実した頃から固まるまでのあたり。

落葉広葉樹

寒さに強く落葉期が適期だが、樹木によって落葉直後がいいか、春がいいかの違いがある。また、東京付近でのウメやバラなどのように一月~二月の厳寒期が適している樹種もある。

根回し

活着の良い木を適期に移植すれば、成功する確立は高くなるが、根の粗い樹主は移植を嫌うので、あらかじめ根を十分に作っておいてやらないと、適期であっても移植に失敗する。

この根作りが根回し、木の大きさや種類によっても違うが、数ヶ月から一年ぐらい前に根の一部を切っておき、切り口から新しい細根を出させ、根からの養分や水分の吸収をよくしておく。

一般に家庭で移植できる木の高さは二~三メートルが限界で、それ以上だと根の広さや深さが大きくなるので、専門家でないと扱いきれない。

移植するため堀上げた根と土は根鉢というが、根鉢が大きいと扱いにくくなり、小さすぎると弱ってしまう。根の性質に合わせて、根鉢の大きさを決めよう。

堀り上げ

根回しで発生した細根が大切なので、細根が保持している土を崩さないように、ひと回り大きく掘る。掘り上げたら、細根を傷めないように注意しながら根巻きをし、根と土を固定させる。

根巻きの方法はいろいろあるが、要は根鉢の土を崩さないように保護すればいいので、小さい根鉢はワラ束で、大きい根鉢はコモなどで包み、外からワラ縄でしっかり巻き締め、幹にからませて固定してやる。

定植

植え穴は、根鉢よりやや大きめに掘るが、深さは元の成育状態より深植えにならないように調整する。元肥と土を下に入れて上部が地上とうまく揃うようにする。

梅雨時などなら、根巻きした縄などは自然と腐敗するので、そのままでもかまわないが、冬季なら取り外しておこう。

剪定用具の種類

サクラ

仕立てや刈り込みをするためには、それにふさわしい用具が必要になる。

木ばさみ

枝葉や縄を切るときに使うハサミで、庭木の手入れには利用範囲の広い道具だ。

いろいろなタイプのものが市販されているが、刃が薄手で刃幅の狭いほうが、長時間使用しても疲れが少なくてすむ。

剪定ばさみ

木ばさみより太い枝が切れる。柄の内側にバネがついているので、手の力を弱めると自動的に戻る。

一般的には小型の方が使いやすく、多少高価でも、質の良いものを選んだほうが使いやすく長期に使えるだろう。

刈り込みばさみ

柄の長い両手用のハサミで、生垣の刈り込み用などに便利な道具。太い枝は力の入る刃元で切り、細い枝は刃先で切るように使い分ける。

高枝剪定ばさみ

手の届かない高枝を切るときに使う。刃で枝をはさみ手元のひもを操作して引き切る。

枝の切り方

コノテガシワ

樹木の性質や切除する枝の太さ、芽のつき方などによって違いはあるが、基本的に共通する部分も多くある。

切り方を誤ると、枝の出る方向が悪くなったりして、樹形を乱すことになるので注意しよう。

細い枝の切り方

よく切れる木バサミか剪定バサミを使い、芽の位置をよく確かめて、残す芽の上部から四十五度の角度で切る。

切る位置が浅すぎる(残す芽の上を開けすぎる)と切除部分から枯れこんできて、残した芽の部分まで枯れることがある。

また、深すぎると新枝が出てもつけ根から折れやすくなる。小枝を間引いたり、切除する場合は、必ず枝のつけ根いっぱいから切り取るようにしよう。

中太枝の切り方

二度に分けて切る。まず、枝の途中から一度切り、次に枝の根元いっぱいから切る。剪定バサミの刃の奥ではさみ、刃先に向けて滑らせ、手前に引くように切るとうまく切れる。

太い枝の切り方

上から一度に切ろうとすると、切っているうちに枝の重みでつけ根から裂けることがあるので、三回にわけて切るようにする。

枝の途中を下から三分の一ぐらいまで切り、次に上から切っていくと、切り口から枝の重みで下に落ちる。

最後に付け根からきれいに切り、切り口から雑菌が侵入しないように、つぎロウなどで保護しておく。

枝たれ樹の切り方

枝が外側に広がるように、外芽を残して切る。内芽を伸ばすと樹木が乱れるので、注意して切ろう。

剪定の基本

灯籠

不要な枝を残したままにしておくと、正常な枝の成育を妨げてしまう。日照、通風に悪い影響があり、害虫の発生の温床になる。樹木全体を見て不用な枝を切除するのが、剪定の基本とされる。

ひこばえ(ヤゴ)

根元から立ち上がる枝がひこばえだ。養分が吸い取られるので切除する。

胴吹き枝(台芽)

幹の途中から芽だしした小枝で、接ぎ木の台木から出た芽が台芽。両方切除する。

下り枝

下向きに飛び出して出る小枝。樹形を乱し見苦しくなるので切除する。

交差枝

主枝や必要な枝に対して交差した形で出る枝。枝の込み合う原因になる。

徒長枝

主幹や主枝から勢いよく伸びる長い枝。放置すると養分をとり樹形を乱す。

逆さ枝

逆方向に伸びた枝で樹形を乱す。

ふところ枝

内部深くに出る枝で、込み合う原因となる。

車枝

一ヵ所から数本出る枝で、樹形を乱す。

平行枝

主枝などと平行して後から出た枝で、込み合う原因になり樹形を乱す。

自然樹形と人口樹形

松並木

自然樹形

自然に活着し、自然のままに成育した樹木は自然樹形になる。

その木の持つ性質のままに育つが、活着した場所の自然環境に影響されながら成育するので、日当たりの良いほうだけよく育ったり、強風で枝の一部が折れていたりする。

また、徒長枝などもそのまま育つので、一部が過密になって下枝が発育不全になっていたり、逆に一部がまばらな空間になっていたりする。

それだけに庭木としては、不向きな樹形となっている。なお、野山から勝手に採取することは、都道府県条例でほぼ禁止されているので、庭木の対象にはならない。

人口樹形

人口樹形とは、整枝や剪定をして人工的に形作った樹形の総称。

生垣などの目的に合わせて刈り込んだ樹形と、鳥や動物などの形に刈り込んで楽しむ樹形(トピアリー)、また、樹木の特性を生かして、自然風に刈り込んだ樹形などさまざまある。

単幹仕立て

太い幹が、一本立つ仕立て方。スギやヒノキなどの針葉樹は、主幹が一本で直立することが多いものだが、広葉樹では横枝が出てしまうことがよくある。

このときは、人工的に整幹してやる。樹高の二分の一以上まで一本立ちしていれば、単幹仕立てにはいる。

直幹仕立て

主としてスギ、ヒマラヤスギ、ヒバなどの高木種に使われる仕立て方で、主幹がまっすぐに伸びた樹形。安定性があり、すっきりとした感じに仕上がる。

曲幹仕立て

幹が、自然に曲がったように仕立てる。日本庭園によく使われる樹形で、クロマツ、アカマツ、ゴヨウマツ、ウメ、カエデなどによく見られる。

仕立て方は二通りあり、人工的に幹に割りを入れて曲げていく方法と、斜めに出る枝などをうまく利用して仕立てていく方法とがある。

玉作り(散らし玉)仕立て

枝ごとに、葉を玉状に丸く刈り込んで仕立てる方法で、幹に玉を散らしたように見せる。

葉が小さく密生する樹木が仕立てやすく、ツゲ、イヌツゲ、ウメ、ツバキ、イチイ、ヒバ類、などがよく仕立てられる。

段作り仕立て

基本的には玉作り仕立てと同じだが、玉の大きさや枝の配列を、意識的に規則正しく揃えて仕立てる。

幹から主枝を多数出し、芽だしもよく、強い剪定にも耐えられる樹木が適している。イチョウ、チャボヒバ、イヌツゲなどがよく仕立てられる。

貝づくり仕立て

基本的には玉作り、段作りと同じだが、玉の形を貝のように仕立てる方法で、前の二つとは別の仕立て方に分けられている。

多幹仕立て

根際はいったん切断し、三本以上の幹を出して仕立てる。三本立ち作り、五本立ち作りなどがある。全体に枝を少なめにして仕立てることが多いようだ。

双幹仕立て

幹の根元近くで、二本に別れる仕立て方。根元から二本立ちした幹の樹木をそのまま利用したり、ひこばえの出やすい樹木をうまく剪定して仕立てたりする。

一本の枝をやや細くして、二本の幹の間の枝は取り、全体が一本の木に見えるように整枝して仕立てる。

株立ち仕立て

低木類に多い仕立て方。地際から数多くの枝や幹が立つ種類に向いている。夏ツバキ、タギョウショウ、ハギ、レンギョウ、エゴなどで、植え込みや寄せ植えなどにも利用される。

流れ枝仕立て

主幹より主枝のほうが長い樹形で、片枝だけ長い片流れ枝仕立てもある。クロマツ、キャラボク、ウメ、イヌツゲなどを池の端に仕立て、水面上に張り出させ垂らす。

車仕立て

主幹を軸にして、車輪を縦にしたように仕立てる。一般に成長の遅い樹木に適している。サザンカ、イチイ、イヌツゲ、ツバキ、ヒバ類などに適しており、二~三メートルぐらいの高さに仕立てる。

ずん胴仕立て

太い幹の先を切り詰め、主枝も幹近くから切り戻す。幹から玉状の枝葉が直接でたように仕立てる。

門の付近などによく植えられているが、幹芯や大枝が折れたときなどにも利用できる。

出芽力の強い樹木が適しており、シイ、カシ、クスノキ、モチノキなどの常緑広葉樹で仕立てる。

枝切り、枝吹き仕立て

ずん胴仕立てや、散らし玉仕立てにしにくい樹木に利用する。主枝を短く切り戻し、切り口から小枝を数多く吹かせ、枝葉のかたよりをいくつか作って仕立てる。

広い枝張りを押さえるので、狭い場所でも育てられる。アセビ、サルスベリ、モチノキ、コブシ、モクレンなど。

樹木各部の働き

カエデ

樹木各部の働き

自分の庭を、全てプロの植木屋さんに任せるという人もいるだろうが、それでは庭木の楽しみを半分しか味わってないといえるだろう。

自分の好きな樹木を自分の好きなように育て、はじめて庭木の楽しさを満喫できるというもの。

庭木は生き物だから、順調に生育させるためには、それなりの時間と労力をかけてやらなければならない。

しかし、手間をかけてやればそれなりの成果があるから、そこがまた庭木の楽しみの一つといえる。

庭木が順調に育っていくためには、いろいろな要素がからみあっているが、まず樹木の生理的なことの基礎知識が必要だ。

根の働き

根は樹木本体を支え、水や養分を吸収し、蓄積している。樹木により根が地中深くに伸びていく深根性のものと、地表近くを伸びていく浅根性のものとがある。

また、幼木のときは深根性で、成育すると浅根性に変化するものもある。

幹の働き

幹は、表皮と木質部、髄でできており、根から養分や水分を通す導管と、葉で生産される物質を移動する師管(ふるい)とがある。

先端部分には成長点があり、生育期には細胞分裂が盛んになり、上へ伸びていく。また、表皮の内側には形成層があり、成長点が上に伸びるのに対して、横に細胞を増やす性質がある。

枝の働き

庭木を育てるとき、最も大切な作業は、枝の整枝と剪定。これらの作業は、枝の成長期と密接な関係がある。庭木の枝は、一般に春に一回延びるが、夏にも出て二回伸びるものもある。

一回目の枝は節間のつまった良い枝の場合が多いが、二回目の枝は、いわゆる徒長枝と呼ばれる間延びした枝なので、多くは切り取る。

枝の生長は、一般的に30日間ぐらい。その後の30日間のうちに、翌年の芽ができあがる。

葉の働き

活動している植物の葉は、一般的に葉緑素を含んでいるので緑色をしている。この葉緑素が光と炭酸ガスを吸収し、水分を分解して炭水化物を合成する。

このときにできた酸素が放出され、同時に水分も蒸散している。また、夜間、光エネルギーの吸収ができないときは、酸素を吸収して炭酸ガスを放出している。

このように樹木にとって光は、成育に大切な要素だが、光が多ければ多いほど良いとは限らない。樹木によっては、日陰のほうを好む性質の種類もあるのだ。

日当たりが良くないと成育しない種類を「陽樹」といい、日陰のほうがよい種類を「陰樹」という。また、本来は陽樹だが、日陰でも成育できる耐陰性の強い樹木もある。

葉の表面には気孔があり、開いたり閉じたりして、水分の蒸散などをうまくコントロールしている。

主な陽樹

アカマツ、ウメ、キョウチクトウ、クロマツ、コデマリ、コブシ、ザクロ、サルスベリ、サンザシ、ソメイヨシノ、タギョウショウ、ハギ、マンサク、モモ、ヤマザクラ、ユキヤナギ、レンギョウ

主な陰樹

アオキ、アジサイ、アセビ、イチイ、イヌマキ、ウメモドキ、クチナシ、サザンカ、ジンチョウゲ、ヒイラギ、マンリョウ、モチノキ、ヤツデ

庭木に適している樹木

松の木

土地に合う樹木が良い

日本列島は縦に細長く、年間平均気温の差が激しく降雨量にもかなり差がある。また、その地方特有の土質をもっていたりするので、その土地に合った樹木は、自然に限定されてくる。

白樺(シラカバ)が好きだからといって、九州に住む人が庭木として楽しもうと思ってもうまくいかないだろう、逆に北海道の人がフェニックスを庭木として周年育てようとしても、寒害で不可能だ。

また、湿気の多い土質を好む樹木もあるし、逆にソテツなどのように、水をきらう樹木もある。このような、特性をよく理解して、自分の家の庭に合う寿樹を選ぶ。

好みやデザインなどを優先させすぎると、苦労して育てても、その木が持つ良さ、美しさを発揮してくれないだろうし、花木や果樹ならよい花や果実をつけてくれない。

その土地に古くからある樹木を参考にして、成育しやすい木を選んで庭木にすることが大切だろう。

移植できる樹木が良い

苗木を購入して育てるなら、気候、土質が合えば、移植しても心配はない。しかし、成木を知人から譲られたときなどは、必ずしも移植可能とは限らないので注意。

旧家の庭にある枝ぶりのみごとな松の古木などは、そこにあるから価値があるので、他に移植できなければ、自分の求める庭木としては何の価値もないだろう。

無理に移植しようとしても、根が石の下まで張っているかも知れないし、移植後に活着させるための刈り込みで、形がくずれることも考えられる。

また、このような古木は、移植して活着させることが難しいので、枯れてしまうことが多々ある。どんな銘木でも、枯れ木では庭木にならないので、移植できることが庭木の条件の一つといえよう。

成長、整枝できる樹木が良い

活着後に成長の良いことも、庭木の条件の一つ。樹形を整えるために整枝をしたり、病害虫のついた時は、枝を切り落とさなくてはならない場合がある。

少し傷めるとすぐに枯れてしまうようでは困る。また、花木や果樹から成長の良いほうが、それだけ目的の花や果実を早くつける。

庭木の生長の良し悪しは、植え付け後の管理に大きく左右されるが、入手時の苗木や植木の選び方も大切だ。

まず、根の良否がポイントだが、一般的に鉢植え苗や、根巻きしている苗木は、根が見えないので、葉や枝から判断する。

葉の色艶が良く、葉と葉や枝と枝がつまった感じで、枝が太く、全体に生き生きしているものが良い苗といえる。